なぜ白だしを作ることになったのか

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    元々、湯浅商店は鰹節の卸・問屋でした。

    そのお客さんはお蕎麦屋さんがメインで、一般のお客様(消費者)には見えないところで働くのが問屋というものです。

    滝野川に店舗もありましたので、昔はおばあちゃんが店頭に立ち、町のかつお節屋さんとして小売りもしていましたが、いまは昔からお付き合いのあるお客様や知り合いの方に品物をお譲りするくらいです。

     

    そんな鰹節問屋が、どのような成り行きでメーカーとしてオリジナルの白だしを作り、その小売を始めたのか。

    今回はその経緯をお話しさせて頂ければと思います。

     

     

    昨今、日本の伝統文化は世界でも大きく注目されています。

    着物、和食(伝統的な日本の食文化)、日本の心と精神。。

     

    和食の基本といえば、「だし」。

    だしの基本となるのが、何と言っても「かつお節」と「昆布」。

    今やその美味しさと味の奥ゆかしさは「旨味(UMAMI)」として知られ、海外で広がる和食ブームの中、ヨーロッパでもかつお節の注目が高まっています。

    2017年9月9日(土)放送 NHKけさのクローズアップ

    2017年9月9日(土)放送 NHKけさのクローズアップ

     

     

    実は、2016年にフランスにかつお節工場が誕生しました。

    東南アジアで生産拠点を持つ鰹節企業は数社ありますが、フランスは初めてで、鰹節業界でも大いにニュースになりました。

    「日本の本当のかつお節を食べてもらいたい。」そんな想いから始まったであろうヨーロッパでのかつお節事業ですが、そこには大きな壁がありました。

    実は、そこで提供されている鰹節は、本国日本で生産されている鰹節とは製法が大きく異なったものなのです。

    その工場や事業自体を否定も批判もするつもりはありませんが、なぜ異なるのかには理由があります。

    それは、鰹節に含まれる成分の問題だったのです。

     

     

    EU=ヨーロッパ連合への輸出に立ちはだかっている規制の1つが、国際的な衛生管理の基準「HACCP(ハサップ)」です。

    HACCPは製造工程で異物の混入や食中毒などを防ぐため、厳しい基準を設けています。

    鰹節は獲ったカツオをさくらのチップなどで燻し、乾燥させることで作られます。

    (本枯れなどの高級品はそこからさらにカビ付け、天日干しを何度も繰り返し、約1年の歳月を経て出荷されます。)

    カツオを燻したとき、表面にタールや焦げのようなものが付着しますが、その焦げに含まれる「ベンゾピレン」という成分がEUの基準(HACCP)を越えるため、現在でも国産の鰹節はEU輸出禁止となっているのです。

    また、本枯れなどの高級な鰹節は、味噌や醤油と同じ類のこうじ菌を散布・繁殖(カビ付けという)させ、言わば発酵状態にすることによって、世界に類を見ないあの独特で豊かな風味と香りを出し、カツオに含まれる旨味を凝縮させるのですが、そのカビによるカビ毒を危惧しているという見解もあります。

    ↓田中淳夫氏による記事を参照

    https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20141221-00041692/

     

    そこでフランスの工場では、カツオの切り身にタール(焦げ)が付着しない方法で燻製・乾燥を行うことで、ベンゾピレンが検出されない“カツオブシ”を提供しているのである。

    肝心の味の感想は、読者のご想像にお任せしたいが、本国日本で作られる本枯れ節は、カツオ漁に始まり、あの磨きのかかった美しい“鰹節”となるまでに長いところで約1年もの歳月と日本古来の伝統的な技法と熟練の職人によって品質の管理・発酵・熟成が行われている。

     

     

    そんな背景の中、湯浅商店はなぜ白だしを作り、イタリアに輸出することになったのか?

    実は、湯浅商店も、もともとは鰹節そのものをイタリアに持っていくつもりでした。

    なぜイタリアかというと、私の従姉妹にあたる人物が“Amor Trading(アモール トレーディング)”という屋号でイタリア食材の輸出入の仕事をしており、その従姉妹からの提案でイタリアでも注目の高い日本の伝統的な“旨味”や“だし”を湯浅商店が提供しようという話になったのが2017年のときである。

    しかしながら、先ほども述べた通り、EUでは国産の鰹節はNG。ではどうしようかという話になり、たどり着いたのが“白だし”である。

    HACCPにおいて問題視されているベンゾピレンは、鰹節を主原料とした出汁を取り、加熱処理すれば基準範囲内で検出されないということが分かった。

     

    白だしとは、鰹節や宗田節、煮干しやアゴ、昆布やしいたけなどの出汁を煮詰め、濃縮し、そこに醤油や塩、砂糖などの調味料を加え味を調整した調味料のことである。

     

    湯浅商店の白だしは、鰹節と宗田節、醤油、塩、発酵調味料(清酒)だけで作られた白だしである。

    EUの基準(HACCP)を通るよう設計したため、白だし本体はもちろん、原料(醤油や清酒など)に至るまで、化学調味料・食品添加物・合成保存料等、人工的化学的な添加物は一切含まれていない。

     

    そして、イタリア人の舌(食文化)にも配慮し、多くの一般的な“白だし”に含まれる甘味となる「みりん」や「砂糖」は添加していない。なぜなら、どうやらイタリア人は料理に甘味(砂糖など)を使うことはあまり一般的ではないらしいのだ。

    これは、ビジネスパートナーでもあり世界を股に掛けるフードコーディネーターでもあるジャコモ・マッジャーロ氏によるアドバイスを参考にした。

    左:ジャコモ・マッジャーロ氏、中央:四代目湯浅一正、右:三代目湯浅勇

    (都内蕎麦屋にて撮影)

     

    かつ、これには日本人としてのメリットもある。

    調味料に甘味を入れないということは、味がとてもシンプルになり、調味料として料理のシーンに登場する機会が増え、幅が広がるのだ。

    本来は鰹節、日本の“だし=旨味”を海外に進出させたかった湯浅商店は、味に関しても極力シンプルでありたかったのが本意である。

     

    しかしながら、ご想像も易い通り、鰹節の出汁を濃縮し、天然の素材や調味料だけを使用したものを商品として成立させるためには、賞味期限や品質管理の問題があり、当然ながら簡単なものではなかった。

    それに、他社の白だしは殆どが300〜500円前後の家庭でもメジャーで安価な調味料。

    それは非常に安価な原料やだしエキス(鰹節から取れる出汁を化学的工程を経て抽出したもの)などの抽出物と大量生産によって成り立つ価格だが、もちろん天然のものとは味的に非常に異なったものとなる。

    天然素材だけで勝負しようという湯浅商店ではとても叶わない価格だった。

     

    日本の添加物に対する基準は、欧米やヨーロッパに比べてあまい。

    つまり、他国に比べて多くの食品添加物が使用許可となっているのが現状の中、天然素材だけで作られ、原価も高く、価格としても他社と比べて高価な、湯浅商店の白だしが果たして受け入れられるのか?

    本物のだし調味料を作りたい!という期待とそれが受け入れられるかという不安が同時にあった。

     

     

    約1年の研究と開発の結果、ようやく商品化できた天然素材だけにこだわった湯浅商店の白だし“旨味”。

    そこには、1920年の創業以来培ってきた鰹節と出汁を知り尽くした技術と活用、日本の伝統的な食文化だからこそ、日本の精神と歴史が詰まっているものだからこそ、本物を伝えたかったその“想い”が入っている。

    ぜひ、本物にこだわる皆さんに、広く手に取って頂きたい商品である。

     

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